2014年10月5日日曜日

第3回特別講座「秋分から秋の色を身に纏う 万葉集 X 草木初め」

第3回目となった特別講座は、秋分の日(9月23日)を目前にした9月21日(日)の秋晴れのなか開催。講座テーマ「秋分から秋の色に身を纏う」は、受講者の皆さんが大変満足となった、内容の濃い講座として無事に終了しました。その模様をレポートします。
今回の会場は、「東京23区内に、こんな緑豊かな場所があるの?」と皆さんが驚いた、東京港野鳥公園@大田区。まるで、大都会の中の「林間学校」の様な雰囲気です。
東京港野鳥公園について...この場所は、本来、現築地市場が設置となる予定地であり、大田市場に隣接の東京湾に面した位置になります。野鳥公園は、埋め立ててから土地を馴染ませている数年の間、自然の再生により渡り鳥の飛来を確認したことから、市民運動により誕生しました。公園の名前の由来は、市民運動の象徴となった「渡り鳥」に起因しています。依ってこの場所は、所謂、行政主導で作るような、私たち人間が楽しむためのアミューズメント型公園ではなく、住民主導で確保した、埋立地の再生自然から学ぶための公園になります。

<公園誕生までの経緯>
◆1966年〜1971年:埋め立て開始
◆1975年:渡り鳥の飛来を確認
◆1983年:市民活動で24.9haを確保
◆1989年:東京港野鳥公園の誕生

<公園の特色>
その1:生物多様性豊な環境の保全
その2:アミューズメント型公園ではない
その3:人工の埋立地に再生した自然
その4:住民主導により誕生した公園

※参考文献:加藤幸子, 2004, 『鳥よ、人よ、甦れ東京港野鳥公園の誕生、そして現在』藤原書店

今回の講座は、東京港野鳥公園の施設をフル活用して、プログラムを進行します。
野鳥公園という名前ではありますが、公園の中には数多くの植物が生息、季節の花「彼岸花」が草木に彩りを添えていました。
季節の移ろいは、草木と連動しているんですね!
さぁ、講座「秋分から秋の色を身に纏う 万葉集 X 草木染め」のスタートです!
講座「午前の部」会場は、公園内の「ネイチャーセンター」。
今回の講座を企画したBLUEBIRDは、この公園で毎月第1土曜日に干潟清掃で「渡り鳥サポーターになろう!」を2011年5月から実施しています。代表の生姜塚理恵は、前回の講座での着物姿から一転、とても活動的な姿に!講座の冒頭では、アースデイ大学の概要説明がありました。
第1部の午前は、ゲスト講師「八木雄二さん(文学博士)」指導のもと講義とフィールドワークを行いました。前半の講義では、2つのテーマで展開しました。1つ目は、葛を題材にした和歌3種を吟味しました。2つ目は、里山の自然を維持管理する方法を学びました。
八木さんは、ここ野鳥公園を活動拠点としている「NPO法人 東京港グリーンボランティア」の代表。ここには◯◯が自生していて…と、公園を隅々まで知り尽くしておられる方。
後半のフィールドワークでは、ネイチャーセンターを飛び出して、里山の自然を維持するために人の手が入ったエリアと、人の手を入れていないエリアで、草木の違いを見て歩きました。最後の時間では、みんなで里山の自然を維持管理する方法で草刈り体験として「草木染め」で必要な葛の葉を刈りました。
目の前に自生している植物=万葉集で描写されている植物!という状況を目の当たりにして、昔の人々の「感性」にとても感心させられましたね。
とはいえ、草刈りは大変な作業になりました(大汗)が、受講者の皆さんの距離感が一気に縮み、いいチームワークが出来上がりました。(草刈り後、皆さんで仲良く昼食タイムに)

第2部の午後は、公園内の「学習センター」に移動して、もうひとりのゲスト講師「子安多江子さん(染織家)」指導のもと、絹素材の帯揚げ兼ストールの「草木染め」を行いました。今回は、野鳥公園に繁茂している葛を使い、色出しの困難な緑色に挑戦!
エネルギッシュな子安さんに、受講者がグイグイ引込まれていきます。まずは、草木染めの基本的な進め方をレクチャーしていただきました。
子安さんの作品に触れ、受講生のテンションは更にUP!
植物から、こんなに美しい色が出るとは驚きです。自然の色は、本当に美しいんですね。
その後、午前中に刈った「葛」を細かく刻み、、、
、、、それを、大量に「煎じ」ます。
この煎じる時間が、とても大切で、時間もかかりました。
今回は「4回」煎じたのですが、「1回煎じ」と「4回煎じ」では染料となる色が全く違う!植物から「緑色を引き出す」には、まず、煎じて「黄色を抜く」必要があるそうで、とても自然科学的な話でもあり、草木染めの「奥の深さ」を感じました。
今回「帯揚げ(兼 ストール)」を染めるのですが、その帯揚げに色が定着しやすい様に、定着液に漬込む作業がありました。
受講者の皆さん、仲良く、ガラス棒で「ツンツン」しながら、漬込んでいる姿が微笑ましい!話も弾む!
煎じる時間は長く、その待ち時間を使って、「植物の色」の講義もしていただきました。
・・・そして、いよいよ、草木染めのクライマックスです!
煎じた葛の葉を漉し、、、
出来上がった染料(緑が鮮やか!)に、帯揚げを漬込む。
最後は、温度管理がとても重要。温度計を見ながら、染料を一定の温度まで引き上げ、「帯揚げ(兼 ストール)」の素材を漬込む。
皆さん真剣モードに再突入!「ツンツン」再開です!
漬込みが終わったら、洗い流す。
凄い!綺麗な緑に染まっています!
実験的に、「1回煎じの染料」の染めにもトライしました。こんなに「黄色」なんですね。
そして、遂に出来上がりました!
一番左は「1回煎じ=黄色」の染め。それ以外は「4回煎じ」の染め。煎じ方法(煎じた鍋の葉の量など)の差で、微妙な色の差が出ることも発見でした。受講者の皆さんは、満足感ある素敵な笑顔いっぱい!
秋の色は、黄色やオレンジ色だけではなかった!夏の陽射しをたくさん浴びた葛の葉は、2014年の秋の色の1つとして、「帯揚げ(兼ストール)」を鮮やかなペパーミントグリーン色に染めました。
朝10時からの長時間の講座でしたが、無事終了となりました。皆様、ありがとうございました。(ご協力いただきました東京港野鳥公園の皆様、ありがとうございました)
第1部では、和歌を通して先人の自然に対する感性に触れ、伝統的な里山の自然を維持管理する方法として、動物が草や木の実を食べるように草木の剪定が必要不可欠であるということを学びました。
第2部では、「草木染め」を通して、色味自体その年、季節の太陽・月・星の巡りと植物の育つ場所により違うことを学びました。
参加者のみなさんは、この講座を通して、自然に寄り添った目線で草木を剪定するということを再発見して、季節の色は地球のリズムによるということを新発見しました。


里地・里海・里山を守る。といいますが、各ゾーンのかつての姿を「口伝する」こと以上に、各ゾーンで「具体的な体験を持って、自分なりの考えを持つこと」が出来た人を、1人でも増やすことが大切だと改めて痛感しました。

(追伸)
講座終了後、実際に帯揚げとしてコーディネートしてみました。(素敵でしょ!)

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